以前からずっと気になっていて、ようやくページ
をめくることができた本です。
戦前から戦中、戦後に至るまでずっと戦闘機
や練習機の設計に携わってきた高山捷一さん
という技術者の人生やその周辺に起きていった
出来事をつづっています。
特に強い印象が残ったのは第九章「FSXの敗
北とその検証」の中に書かれていた、F2支援
戦闘機を開発する際、アメリカのF16を改造し
ていく中で飛行制御用ソフトのソースコードを
ブラックボックスとされてしまったために、急遽日
本側で開発せねばならなくなったという話です。
日本は世界有数の防衛力を持っていると言
われますが、そうした見かけの裏では基盤にな
る産業が骨抜きになっているという話も出てい
て、ある意味非常に怖いことだと思います。
以下に示す高山さんの言葉は、この問題が
持つ深刻さをとても分かりやすく表しているよ
うに見えてなりません。
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「日本に、国防とか軍事力の整備といったこと
について確固たるコンセンサスがないことが第一
に挙げられますし、仮に公式的にあると思われ
る方針についても、多くの識者の間に、それで
いいのかという大きな疑問があります。
防衛力の基盤として航空工業力、研究・開
発能力まででよいとするのか、あるいは、輸入
機により、当座のコスト効果のみで決められた
外見的な防衛力で満足するのかといった、基
本的観念が確定していないことが大きな問題
です。
後者の傾向がこれ以上に続いて、輸入したほ
うが簡単で安いという目先の利益だけにとらわ
れた功利主義を選択し続けていくと、防衛産
業から技術者がどんどん離れていって取り返し
のつかないことになってしまう」
第一章 九十歳の現役 - 防衛庁技術系
官士の精神的支柱(P.37)より
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技術の蓄積や知恵の伝承が、何気なく送って
いる日々の生活の基盤としていかに大きな意
味を持つか強く示唆する内容に感じました。
2008-09-01
戦闘機屋人生
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