2013-05-04

速度計の誤作動に対応できなかった事例


更新が遅くなりましたが、続けたいと思います。

●パイロットの習性によるもの
(2:速度計の誤作動に対応できないことによる事故)

【実際の事例】
バージェン航空301便墜落事故
アエロペルー603便墜落事故

これらの事故は、メーデー!:航空機事故の真実と真相
という番組でも取り上げられていますね。

シーズン5 THE PLANE THAT WOULDN'T TALK
(バージェン航空301便墜落事故)


シーズン1 FLYING BLIND
(アエロペルー603便墜落事故)


飛行機の速度計は、英語で"Air Speed Indicator"と
呼ばれますが、ここでわざわざ英語による表記を出し
たのには理由があります。

ご存知の方もおられると思いますが、飛行機で"速度"
という言葉が出てきた場合、まずは次のような種類の
速度が出てきます。

●対気速度(Air Speed)
飛行機が受けている風圧を示す速度。
ここでは、まだ「?」と思うかもしれませんが、
とりあえず、次に進みましょう。

●対地速度(Ground Speed)
空では絶えず風が吹いていますから、飛行機が
エンジンの推力によって受ける風の速さ(つまり
対気速度)とイコールで移動できるとは限りません。

追い風なら機体は風に乗って速く移動できますし、
逆に向かい風なら風に押し戻される状態に抵抗
しながら進むので遅くなります。

空港のWebサイトなどで得られる飛行機の到着
時間は何をもって示されるかというと、この対地
速度というわけです。

「じゃあ、単純に移動時間が分かる対地速度だけ分
かっていればいいじゃないか」という声があるかもし
れませんね。でも、これはあくまで飛行機を輸送手
段として捉えた利用者側の話。

飛行機は一定以上の速度を超える風を翼へ当てる
事によって揚力を作り出して飛んでいるわけですか
ら、対気速度(Air Speed)という指標は操縦を行う
上で非常に大切な要素になります。速度計の英語
表記を持ち出したのは、このためです。

ちなみに著者は、速度がパイロットにとっていかに
大きなものか、次のように書かれています。


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パイロットにとって、速度は何にも増して優先
しなければならない。遅いと失速、速いと空中
分解というまさに命に直結するもので、そこか
ら速度第一主義に陥る運命的なものがある。

第一部 パイロットのヒューマン・エラー
(P.82)より
------------------------------------------------------------


では、それだけ大切な"速度(ここでは対気速度)"を
指し示す仕組みがどうなっているかというと、"Pitot
Static System"と呼ばれるものが関わっています。

Wikipediaで"Pitot-static system"として掲載されて
いる画像を引用して説明すると、Pitot Tube と書い
てある部分が飛行機の機種に応じた箇所に取り付
けられ、ここから入った空気が、機体側面に付いて
いる Static Port と呼ばれる箇所から抜けていく構
造になっているんですね。

また、Pitot Tube または Static Port どちらかの穴が
詰まってしまうと速度計が正常に機能しない状態に
陥ります。

バージェン航空の事故では、ドロバチが Pitot Tube
内部に巣を作って詰まらせていたことによって速度
計の動作異常が発生したと見られているそうですが、
個人的には、機長が離陸滑走中に自身と副操縦士
の各座席に装備されている速度計の指示が不一致
を示していることに気づきながら、離陸後にフライトを
継続したのは一体なぜだったのだろうという疑問が
あります。

例えばネットワーク機器を冗長構成で設置するという
事はそれだけ重要なシステムだからであって、設置中
に片側の系統が故障したと見られた場合にそのまま
作業を続行することはないだろうし、ましてや本番環境
なら...と思うのですが、これと同様に重要な計器の一つ
である速度計が異常な状態を保持したまま離陸でき、
かつ予備計器があったとしても、万一を考慮して空港
へ戻る事ができたのならば最悪の事態に至らず済ん
だのではないかとも思ってしまうわけです。

もちろん、航空機の操縦訓練には計器が故障した際に
備えるものがありますし、著者が勤務されている会社で
はバージェン航空やアエロペルーによる事故後、シミュ
レータを用いて速度計の故障をいち早く発見し、安全に
着陸するためのプログラムが取り入れられているそうで
すが、考えるほどにスッキリしない内容に感じます。


■関連リンク
Pitot Static Instruments ピトー静圧系統
CFI Japan

航空軍事用語辞典++ 指示対気速度

航空軍事用語辞典++ 較正対気速度

航空軍事用語辞典++ 真対気速度

「ピトー管」原因の墜落、過去にも
ニューズウィーク日本語版
2009年6月11日(木)17時00分
マーク・ホーゼンボール(ワシントン支局)

旅客機のコックピット - Wikipedia

6/6 (木) Partial panel

速度計などなくても飛行機は安全に飛ばせます。
目指せ!エアラインパイロット
2007/10/8(月) 午前 11:13